鎖を登らないと決めたら、石鎚山の紅葉が見えた|土小屋ルート・50代の選択

旅

石鎚山の鎖を、もう登らないことにしています。

登れないわけではありません。過去に登ったことはあります。ただ、いつからか登らなくなりました。

10月中旬、紅葉の石鎚山に行ってきました。土小屋ルートで、二の鎖も三の鎖も迂回路を通り、弥山まで。往復4時間ほどの山歩きでした。

そして、歩きながら気づいたことがあります。鎖をやめてから、山が見えるようになったということです。

この記事は、石鎚山の紅葉の記録であると同時に、「登らない」という選び方の話でもあります。同じ年代で、同じことを考え始めている方に届けばと思います。

鎖を使わないと決めています

石鎚山には二の鎖・三の鎖があり、どちらにも迂回路があります。わたしは今回、すべて迂回路を通りました。

これは「鎖が登れないから」ではありません。登らないと決めているからです。

その違いは、自分の中でははっきりしています。できないことを避けているのではなく、やらないことを選んでいる。似ているようで、気持ちの置きどころがまるで違います。

きっかけらしいきっかけは、ありません

正直に書きます。何かがあって決めたわけではないのです。

落ちそうになったわけでも、誰かの事故を見たわけでもありません。体力の限界を突きつけられた日があったわけでもない。

いつの間にか、登らなくていいと思うようになっていました。

劇的な話がなくて申し訳ないのですが、変化とはそういうものではないでしょうか。ある日を境に変わるのではなく、気がついたら前とは違う選び方をしている。

そして振り返ってみると、この決め方のほうが長持ちしている気がします。怖い思いをしてやめたのなら、怖くなくなればまた登るでしょう。でも、そうではないので、たぶんこの先も登りません。

土小屋ルートと、2つの鎖

今回歩いたのは土小屋ルート、いわゆる裏参道です。

青空の下にそびえる石鎚山の山頂部。岩峰の斜面がまだらに色づいている
土小屋ルートの途中から見た石鎚山。あの岩峰の上が弥山です
成就社ルート(表参道)土小屋ルート(裏参道)
入り口石鎚山ロープウェイ石鎚スカイラインで土小屋まで車
距離長い往復 約10.5km
標高差大きい小さい(土小屋が標高約1,500m)
鎖場試しの鎖から三の鎖まで二の鎖・三の鎖

土小屋を選んだ理由は、標高が約1,500mあるからです。山頂の弥山が1,974mですから、自分の足で登るのは500mに届きません。表参道より体にかかる負担が軽い。

鎖の数も2つで済みます。表参道の「試しの鎖」を通りません。標高を乗り物で稼いでから歩くという意味では、剣山のリフトと似た考え方です。

コースタイムの目安はこうです。

  • 土小屋 → 二の鎖小屋:約100分
  • 二の鎖小屋 → 弥山:約35分
  • 弥山 → 二の鎖小屋(下り):約35分
  • 二の鎖小屋 → 土小屋(下り):約75分

わたしは休憩と写真を入れて、往復で4時間ほどでした。標準的なコースタイムとほぼ同じです。

迂回路は鉄の階段。歩いて気づいたこと

迂回路は、岩の斜面に取り付けられた鉄の階段です。

石鎚山の切り立った岩壁と、その斜面を染める紅葉
この岩壁のどこかに鎖と迂回路があります
登山道で見上げた黄葉したカエデ。青空に黄色い葉が広がっている
階段を上がりながら見上げると、カエデが光を透かしていました

一段ずつ、足を置く場所がはっきりしています。腕で自分の体を引き上げる必要がありません。高いところが得意なわけではありませんが、怖いとは感じませんでした。

そして、ここが今回いちばん書きたかったことです。

迂回路を歩いていると、紅葉を見る余裕がありました。

鎖を登っているあいだ、人は手元と足元しか見ていません。次にどこを掴むか、どこに足を置くか。それで精一杯になります。顔を上げる余裕はないし、上げたところで目に入るのは岩肌です。

迂回路は違いました。階段を上がりながら、周りが見えるのです。

斜面を染めている赤。岩の隙間から伸びている木。向かいの尾根。登ってきた道の下に広がる雲。

同じ山の、同じ高さを通っているのに、見えているものが違う。鎖を登っていたころ、わたしはこの景色を見ていなかったのだと思いました。

早く着くわけでもなく、偉いわけでもない。ただ、見えるものが増えました。それだけのことですが、山に登る理由としては十分な気がしています。

弥山で引き返しました

弥山に着きました。標高1,974m。神社があり、多くの人が休んでいます。

弥山から見た天狗岳。紅葉の稜線を登山者が歩いている
弥山から見た天狗岳。稜線を歩く人の列が見えます

ここから尾根を15分ほど進むと、西日本最高峰の天狗岳(1,982m)があります。弥山より8m高い、本当の最高地点です。

今回は行きませんでした。

体力的にここまでだと判断したからです。天狗岳までの尾根は細く、岩の上を歩きます。往復すれば、そのあとに下りが控えている。残りの力を考えて、弥山で区切りました。

鎖をやめたのと、同じ種類の判断だったと思います。行けるか行けないかではなく、どこで区切るかを自分で決める。

弥山から眺める天狗岳は、それだけで絶景でした。岩の稜線が空に向かって伸び、その斜面を紅葉が覆っている。見るために来たのだと思えば、何も足りていません。

紅葉は山頂付近が見頃でした

10月中旬の時点で、紅葉がいちばんよかったのは山頂付近でした。

石鎚山から見た稜線の紅葉と、その向こうに広がる雲海
稜線の紅葉と、その向こうに広がる雲海
笹に覆われた稜線が連なり、遠くに平野と海が見える
笹原の稜線の向こうに、平野と海が見えました

石鎚山の紅葉は、標高の高いところから始まり、少しずつ下りていきます。

場所見頃の目安
山頂付近10月中旬
成就社付近10月中旬〜20日前後
麓(ロープウェイ下谷駅あたり)11月上旬

ですから、「山頂の紅葉が終わった」からといって、石鎚山の紅葉が終わるわけではありません。11月に入れば、麓のほうが見頃になります。

これから行かれる方は、今どのあたりまで下りてきているかを調べてから出かけると、無駄足になりません。

これから行く人へ

石鎚スカイラインのゲート時間

土小屋へは石鎚スカイラインで上がります。このゲートには開閉時間があります。

登山道脇に咲いていた青紫色のリンドウの花
道ばたに咲いていたリンドウ。秋の山で出会うと嬉しい色です

9月1日から11月30日は、開門7時・閉門18時。時期によって変わります。

どれだけ早起きしても、7時より前には通れません。下山も18時までに通り抜ける必要があります。

※変更されることがあるので、出発前に公式サイトで確認してください。

駐車場と混雑

土小屋の駐車場は無料です。ただし紅葉の休日は、石鎚山が一年でいちばん混む時期にあたります。駐車場も登山道も混みます。平日に行ける方は、平日を。

同じ久万高原方面のドライブは、四国カルストの記事にまとめています。

服装と持ち物

標高1,900m台です。麓の感覚で行くと寒い思いをします。

  • 登山靴(ミッドカット以上がおすすめです)
  • 防風のレイヤーとレインウェア
  • 手袋
  • 飲み物
  • ヘッドライト(下山が遅れたとき用)
  • 現金(山小屋などで必要になる場合があります)

鎖を使うかどうか

これは、ご自分で決めてください。

登りたい人は登ればいいと思います。わたしが言いたいのは「鎖は危ないからやめましょう」ではありません。迂回路という選択肢があって、それを選んでも山は十分に楽しめるということだけです。

紅葉の時期は鎖場に順番待ちができます。急ぐ理由がないなら、迂回路に回るのも手です。

まとめ

  • 石鎚山の二の鎖・三の鎖には、どちらにも鉄の階段の迂回路があります
  • 迂回路でも弥山(1,974m)まで行けます
  • 土小屋ルートは往復約10.5km、わたしは4時間ほどで歩きました
  • 紅葉は10月中旬で山頂付近が見頃。11月は麓が見頃になります
  • 石鎚スカイラインのゲートは、9月から11月は7時〜18時
  • 土小屋の駐車場は無料

鎖を登らなくなって、損をした気はしていません。むしろ、同じ山で見えるものが増えました。

年齢とともにできなくなることは、たしかにあります。でも、やめたから見えるようになるものもある。石鎚山の紅葉は、それを教えてくれました。

Y.T

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