石鎚山の鎖を、もう登らないことにしています。
登れないわけではありません。過去に登ったことはあります。ただ、いつからか登らなくなりました。
10月中旬、紅葉の石鎚山に行ってきました。土小屋ルートで、二の鎖も三の鎖も迂回路を通り、弥山まで。往復4時間ほどの山歩きでした。
そして、歩きながら気づいたことがあります。鎖をやめてから、山が見えるようになったということです。
この記事は、石鎚山の紅葉の記録であると同時に、「登らない」という選び方の話でもあります。同じ年代で、同じことを考え始めている方に届けばと思います。
鎖を使わないと決めています
石鎚山には二の鎖・三の鎖があり、どちらにも迂回路があります。わたしは今回、すべて迂回路を通りました。
これは「鎖が登れないから」ではありません。登らないと決めているからです。
その違いは、自分の中でははっきりしています。できないことを避けているのではなく、やらないことを選んでいる。似ているようで、気持ちの置きどころがまるで違います。
きっかけらしいきっかけは、ありません
正直に書きます。何かがあって決めたわけではないのです。
落ちそうになったわけでも、誰かの事故を見たわけでもありません。体力の限界を突きつけられた日があったわけでもない。
いつの間にか、登らなくていいと思うようになっていました。
劇的な話がなくて申し訳ないのですが、変化とはそういうものではないでしょうか。ある日を境に変わるのではなく、気がついたら前とは違う選び方をしている。
そして振り返ってみると、この決め方のほうが長持ちしている気がします。怖い思いをしてやめたのなら、怖くなくなればまた登るでしょう。でも、そうではないので、たぶんこの先も登りません。
土小屋ルートと、2つの鎖
今回歩いたのは土小屋ルート、いわゆる裏参道です。

| 成就社ルート(表参道) | 土小屋ルート(裏参道) | |
|---|---|---|
| 入り口 | 石鎚山ロープウェイ | 石鎚スカイラインで土小屋まで車 |
| 距離 | 長い | 往復 約10.5km |
| 標高差 | 大きい | 小さい(土小屋が標高約1,500m) |
| 鎖場 | 試しの鎖から三の鎖まで | 二の鎖・三の鎖 |
土小屋を選んだ理由は、標高が約1,500mあるからです。山頂の弥山が1,974mですから、自分の足で登るのは500mに届きません。表参道より体にかかる負担が軽い。
鎖の数も2つで済みます。表参道の「試しの鎖」を通りません。標高を乗り物で稼いでから歩くという意味では、剣山のリフトと似た考え方です。
コースタイムの目安はこうです。
- 土小屋 → 二の鎖小屋:約100分
- 二の鎖小屋 → 弥山:約35分
- 弥山 → 二の鎖小屋(下り):約35分
- 二の鎖小屋 → 土小屋(下り):約75分
わたしは休憩と写真を入れて、往復で4時間ほどでした。標準的なコースタイムとほぼ同じです。
迂回路は鉄の階段。歩いて気づいたこと
迂回路は、岩の斜面に取り付けられた鉄の階段です。


一段ずつ、足を置く場所がはっきりしています。腕で自分の体を引き上げる必要がありません。高いところが得意なわけではありませんが、怖いとは感じませんでした。
そして、ここが今回いちばん書きたかったことです。
迂回路を歩いていると、紅葉を見る余裕がありました。
鎖を登っているあいだ、人は手元と足元しか見ていません。次にどこを掴むか、どこに足を置くか。それで精一杯になります。顔を上げる余裕はないし、上げたところで目に入るのは岩肌です。
迂回路は違いました。階段を上がりながら、周りが見えるのです。
斜面を染めている赤。岩の隙間から伸びている木。向かいの尾根。登ってきた道の下に広がる雲。
同じ山の、同じ高さを通っているのに、見えているものが違う。鎖を登っていたころ、わたしはこの景色を見ていなかったのだと思いました。
早く着くわけでもなく、偉いわけでもない。ただ、見えるものが増えました。それだけのことですが、山に登る理由としては十分な気がしています。
弥山で引き返しました
弥山に着きました。標高1,974m。神社があり、多くの人が休んでいます。

ここから尾根を15分ほど進むと、西日本最高峰の天狗岳(1,982m)があります。弥山より8m高い、本当の最高地点です。
今回は行きませんでした。
体力的にここまでだと判断したからです。天狗岳までの尾根は細く、岩の上を歩きます。往復すれば、そのあとに下りが控えている。残りの力を考えて、弥山で区切りました。
鎖をやめたのと、同じ種類の判断だったと思います。行けるか行けないかではなく、どこで区切るかを自分で決める。
弥山から眺める天狗岳は、それだけで絶景でした。岩の稜線が空に向かって伸び、その斜面を紅葉が覆っている。見るために来たのだと思えば、何も足りていません。
紅葉は山頂付近が見頃でした
10月中旬の時点で、紅葉がいちばんよかったのは山頂付近でした。


石鎚山の紅葉は、標高の高いところから始まり、少しずつ下りていきます。
| 場所 | 見頃の目安 |
|---|---|
| 山頂付近 | 10月中旬 |
| 成就社付近 | 10月中旬〜20日前後 |
| 麓(ロープウェイ下谷駅あたり) | 11月上旬 |
ですから、「山頂の紅葉が終わった」からといって、石鎚山の紅葉が終わるわけではありません。11月に入れば、麓のほうが見頃になります。
これから行かれる方は、今どのあたりまで下りてきているかを調べてから出かけると、無駄足になりません。
これから行く人へ
石鎚スカイラインのゲート時間
土小屋へは石鎚スカイラインで上がります。このゲートには開閉時間があります。

9月1日から11月30日は、開門7時・閉門18時。時期によって変わります。
どれだけ早起きしても、7時より前には通れません。下山も18時までに通り抜ける必要があります。
※変更されることがあるので、出発前に公式サイトで確認してください。
駐車場と混雑
土小屋の駐車場は無料です。ただし紅葉の休日は、石鎚山が一年でいちばん混む時期にあたります。駐車場も登山道も混みます。平日に行ける方は、平日を。
同じ久万高原方面のドライブは、四国カルストの記事にまとめています。
服装と持ち物
標高1,900m台です。麓の感覚で行くと寒い思いをします。
- 登山靴(ミッドカット以上がおすすめです)
- 防風のレイヤーとレインウェア
- 手袋
- 飲み物
- ヘッドライト(下山が遅れたとき用)
- 現金(山小屋などで必要になる場合があります)
鎖を使うかどうか
これは、ご自分で決めてください。
登りたい人は登ればいいと思います。わたしが言いたいのは「鎖は危ないからやめましょう」ではありません。迂回路という選択肢があって、それを選んでも山は十分に楽しめるということだけです。
紅葉の時期は鎖場に順番待ちができます。急ぐ理由がないなら、迂回路に回るのも手です。
まとめ
- 石鎚山の二の鎖・三の鎖には、どちらにも鉄の階段の迂回路があります
- 迂回路でも弥山(1,974m)まで行けます
- 土小屋ルートは往復約10.5km、わたしは4時間ほどで歩きました
- 紅葉は10月中旬で山頂付近が見頃。11月は麓が見頃になります
- 石鎚スカイラインのゲートは、9月から11月は7時〜18時
- 土小屋の駐車場は無料
鎖を登らなくなって、損をした気はしていません。むしろ、同じ山で見えるものが増えました。
年齢とともにできなくなることは、たしかにあります。でも、やめたから見えるようになるものもある。石鎚山の紅葉は、それを教えてくれました。
Y.T


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